
糖質制限の科学的根拠ってあるの?
糖質制限をやっていく上で、痩せたよ、という口コミはたくさんあって、この効果を疑うことはあまりなかったのですが、そもそもそれって科学的に証明されている?
そもそも、安全性は問題ないんだっけ?と最近思うようになりました。
ということで、糖質制限に関する論文、エビデンスを調べて、まとめてみました。
糖質制限をしようと考えるときに、こういう悩みが出てきますよね。
- 糖質制限の安全性についてエビデンス、科学的根拠はあるの?
- 糖質制限って危険じゃないの?
- 論文では糖質制限が体重減少に効果があるという結果があるの?
- 炭水化物を抜いた分、脂肪やタンパク質をたくさん取ることになるけど大丈夫?
こういった悩みの解決には論文を調べるのが一番です。
目次
糖質制限の論文とダイエット
実は、論文にはいい結果も悪い結果もあり、毎年のように新たな論文、エビデンスが出て、糖質制限論争は決着か、と言われますが、未だに様々な意見があると言われています。
私的には論文を見るときに重要なのは、その権威性や納得性です。
とはいえ、素人の私たちにそんなものは分からないので、有名・権威ある医学雑誌等に掲載された論文か、というのが信頼できるかどうかの要素になると思います。
先に、一通り調べてみた結論をお伝えしておきます。
体脂肪率や体重が標準より明らかに多く(BMI25以上が目安)、太っていて痩せないといけないと認識している人にとっては、私が推奨している糖質制限ダイエット(期間を決めてやる、張り切り過ぎずちょっと緩めにやる)を否定する結果は特にありません。
世の中の専門家の間では、糖質制限を続ける場合の安全性、危険性は様々な論文があり、結局、バランスの良い食事がいいね、という話も確かにあります。
でも、それは長期間の糖質制限(それも結構ちゃんとした糖質制限)を続けた場合の話が大半です。
だから、これから期間を決めて、糖質制限ダイエットをしようとしている人、今まさに糖質制限ダイエット期間中の人、糖質制限を緩めにやってみようという人については、特に論文の内容を必要以上に気にする必要はないと思います。
一方、(糖尿病等の必要性に迫られてではなくて)今後も一生糖質制限を続けていこうと思っている人は少し気にして見てみるといいかもしれません。
糖質制限の論文・エビデンス
体重を減らして、ナイスバディを手に入れたい、ダイエットで結果を出したい私たちは別に一生糖質制限食で生きていこう、炭水化物抜きで生きようとは思っていないはずです。
だから、論文のいい所は納得して見て、悪いところは少し気に止めておきながら、どういう風に糖質制限を実施すべきか改めて考えてみるといいと思います。
糖質制限食を推奨するエビデンスとなる論文
糖質制限食の有効性、体重減少効果を示した論文は実はずいぶん前からたくさんあります。
有名な医学誌で取り上げられた代表的なものをご紹介します。
なお、先述の通り論文を見るときに重要なのは、ちゃんとした権威のある医学界で信頼される医学誌に取り上げられているかどうか、というものです。
ここでは、世界五大医学誌に掲載され、医学界で一定のインパクトがあると言われているものを中心に紹介します。
糖質制限の有効性を認めた論文
まずは、世界五大医学誌の一つ「NEJM」(The New England Journal of Medicine)に2008年に掲載された論文で「ダイレクト試験」と呼ばれているものです。
試験はイスラエルで行われ、対象は322人の被験者を無作為に3つの食事法のグループにわけて、体重の変化と脂質の状況を2年間にわたって 追跡調査しています。(無作為に分けていることがポイント)
(1)低脂肪食(カロリー制限あり)
(2)地中海食(オリーブオイル、ナッツ、魚介類等。カロリー制限あり)
(3)低炭水化物(糖質制限)食(カロリー制限なし)
この3つのグループの2年後の結果は、(3)4.7キロ→(2)4.4キロ→(1)2.9キロの順に体重減少効果がありました。
糖質制限食のグループはカロリー制限なしでしたが、結果的には他の2つのグループとほぼ同じカロリーになっていたようです。
つまり、同程度のカロリーでも食べるものによって、体重減少効果が異なっていたことを示しています。
また、この論文では低糖質(糖質制限)食のグループが、体重減少効果だけでなく、最も血糖コントロールがされていること、動脈効果のリスクが低いことも示唆されています。
糖質制限による体重減少効果を認めた論文
これも世界五大医学誌の一つである「JAMA」(The Journal of the American Medical Association)に2007年3月に掲載された論文があります。
この論文は「A to Z Study」と呼ばれています。
対象は311人の女性。4つのグループに分けて、1年間それぞれ別の食事による体重減少効果を見たものです。
簡単に4つのグループを記すと、以下になります。
(1)低糖質によるダイエット食
(2)バランス食(タンパク質、炭水化物、脂肪を3:4:3)
(3)高炭水化物、低脂肪食
(4)高炭水化物、採食中心(肉・魚類はなし)
体重減少効果が大きかったのは、(1)→(3)→(4)→(2)の順でした。
それも低糖質による体重減少効果は顕著でした。
開始半年で平均減少体重は(1)が約6キロ、ほかは2キロ前後です。(1年後だと少し戻って(1)で約4.7キロ、他は1.6キロから2.6キロ程度でした)
また、(1)低糖質によるダイエット食は善玉コレステロールも増加していました。
この論文では糖質制限食である(1)が体重減少に効果があると結論づけられました。
糖質制限の安全性を示した論文
糖質制限の安全性を示した論文もあります。
これも世界五大医学誌の一つ「NEJM」(The New England Journal of Medicine)に2006年に掲載された論文です。
対象は8万2,800人で、20年間の追跡調査を行っています。
結果は「食事の炭水化物の割合が最も少ないグループでは、冠動脈疾患のリスクは少なく、逆に炭水化物の割合が多いことが冠動脈疾患のリスクの増加に関連している」というものでした。
これが糖質制限食で一定の安全性を示したと言われている論文です。
糖質制限食の必要性を示唆した論文
次は、炭水化物の摂取量が死亡リスク上昇と関係していると話題になった論文です。
米を主食とする日本人にとっては、とても大きな話です。
この論文は世界五大医学誌の一つ「The LANCET」に2017年に掲載されたカナダの研究機関による「The Prospective Urban Rural Epidemiology study(PURE)」という比較的的新しい論文です。
5大陸18カ国で13万5千人以上(2003年から10年間の間に登録された35~70歳)を研究の分析対象としています。
対象者の摂取する栄養バランス等に基づき、カテゴライズして研究を行っています。
結果、炭水化物の摂取量が多い人ほど死亡のリスクが高まっており、脂質の摂取量が多いほど死亡のリスクが低下しているということになっています。
また、炭水化物の摂取量と循環器系疾患による死亡率には明確な関連がない、また脂質の摂取量と心筋梗塞や心血管疾患による死亡率とも、関連性がなかったとされています。
炭水化物を多くとり、脂肪を少なくするべき、という日本人的な食事の概念を覆す研究です。
しかしながら、この研究に日本は入っていません。
高脂肪食のアメリカも入っていません。
カナダ、南アフリカ、インド、中国、チリなどが対象で、アジアの生活水準が高い、日本や韓国が入っていないため、元々脂肪を多く取らない対象者が多かった可能性もあります。
今後、栄養過剰的な国も多く対象になれば少し変わったものになるかもしれません。
それでも、衝撃的な結果であることには間違いないのです。
日本も対象になった研究では、世界五大が医学誌の一つ「BMJ」(British Medical Journal)に2012年に掲載された、ハーバード大学による研究があります。
これは日本、アメリカ、オーストラリア、中国での過去の論文を解析したメタ解析と呼ばれるもので、白米の摂取量が多いほど糖尿病リスクが高まるというものです。
総カロリーの半分以上を占めるのが糖質では、白米の摂取量が多くなるのですが、日本的なそういった食事は糖尿病リスクが高いということです。
ただし、1日1時間以上の運動や肉体労働を行う人は、白米摂取量の増加と糖尿病発症リスク増加の関連性はなかったとされる研究もあります。(日本の国立がん研究センター等の研究)
最新の日本の糖質制限に関する論文
最近の日本を対象とした日本人のエビデンスもあります。
2014年に「日本疫学学術総会」で報告された「NIPPON DATA 80」という論文です。
この論文は主食が米で比較的糖質摂取量が多いと言われている日本人の死亡率、心臓病等のリスクへの影響を研究されたものです。
9,200人、29年間の追跡調査を行っており、普段の食習慣で糖質を多く摂取する人から、少ない人まで10のグループに分けて、調査しています。
一番糖質を摂取しているグループで、総カロリーの7割超が糖質、最も糖質を摂取していないグループでも5割程度が糖質でした。
つまり、意図的な強い糖質制限ではなく、普段の食習慣から比較的糖質摂取が少ないグループと多いグループを比較したものになります。
糖質制限で言えば、糖質5割は相当にゆるゆるの糖質制限になります。
結果は、最も糖質摂取が少ないグループは、糖質摂取が多いグループに比較して、心臓病等の心血管の死亡リスク、また総合的な死亡リスクは2割~3割低いというものでした。
特にこの傾向は女性に強く現れており、男性は飲酒、喫煙等も女性に比べて多いことから、女性の方が顕著に現れたのではないかと言われています。
とても緩い糖質制限でも、このような結果が得られているので、安心材料ではあります。
以上のように、糖質制限を推奨すべき理由になる論文は数多くあります。
糖質制限への警鐘を鳴らす論文
次は、上記とは逆に、糖質制限は危ない、という論文も見ていきましょう。
実はこちらの論文はそれほどまだ多くはありませんが、最近になっていくつか出てきているようです。
炭水化物は少なくても死亡率が高まるという論文
この論文も世界五大医学誌の一つ「The LANCET」から、2018年に行われた研究です。
米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の研究者が行ったもので、45~65歳の米国成人1万5,428人を対象に中央値で25年間追跡しています。
結果としては、炭水化物の摂取量と死亡率はU字型の関連性が見られたというものです。
炭水化物の摂取量が30%未満の場合と70%以上の場合は死亡率が高くなっていました。
そして、炭水化物の割合が50~55%が最も死亡リスクが低いとされています。
さらに、日本を含む43万人以上のデータを加えたメタ解析(過去の論文の解析)を行った場合も同様の結果でした。
また、炭水化物の代わりに動物性たんぱく質や脂肪を増やしている場合は死亡リスクが高まっており、植物性たんぱく質や脂肪を増やしている場合は死亡リスクが低下することも示唆されています。
つまり、糖質制限をする場合は、炭水化物の代わりに植物性たんぱく質や脂肪、菜食主義になると健康的だというものです。
一方、この研究は25年にわたって行われていますが、その間の食習慣の確認は自己申告によるもので、研究開始時と6年後の2回しか行われておらず、25年間の間に食習慣が変わっている可能性はあるとこの研究者も言っています。(観察研究であり、因果関係を示したものではないと)
とはいえ、長期間に渡る動物性たんぱく質や脂肪を中心とした糖質制限は推奨されない、というものです。
2.米は食べるべきという論文
白米の摂取を減らすべき、というのは日本の農業界にとっては、大変な話です。
2018年に日本農業新聞に掲載された東北大学大学院の研究では、マウス実験ではありますが、炭水化物を制限したマウスは通常よりも20~25%短命だったという研究があります。
また、糖質制限を行ったマウスは外見上も背骨の曲がり具合や脱毛が多く、老化が30%早かったという結果になっています。
マウス実験ではありますが、極端な食事スタイルを長期間継続すると、年を取ってから悪く効いてくる可能性を示唆しています。
よくある糖質制限の危険性の話
糖質制限の危険性が気になる方で、最も多いのが、ふらつくという症状です。
私はなったことはありませんが、女性に比較的多いようです。
これは糖質制限に限らず、ダイエットで食事を減らすと起こる場合があり、主な原因はカロリーの低下のようです。
糖質制限で主食を抜いたのに、それ以外の食事も我慢しすぎて、摂取カロリーが極端に少なくなる生活を続けると身体によくありません。
主食を抜いても、野菜だけじゃなく、タンパク質や脂肪もちゃんと摂ることが重要です。
私の場合はお腹いっぱいになるまで食べます。
お肉や魚はもちろん、マヨネーズなんかもたっぷり使います。
まとめ
では、糖質制限の論文に関するまとめです。
- 以前からから国内外の多くの論文で、糖質制限による体重減少、健康面での有効性はデータがある
- 一方、近年では極端な糖質制限や動物性たんぱく質、脂肪の摂り過ぎを長期間続けた場合の危険性を指摘する論文もある
- 長期間の糖質制限を続ける場合は、動物性たんぱく質・脂肪に極度に偏らない食習慣を意識する
- 数カ月程度の短期間のダイエットに取り組むなら糖質制限を否定する危険性は少ない
- また、健康上痩せたほうがいいと認識している人は短期間での糖質制限ダイエットを実践することで、痩せて健康になれる可能性がある(私自身の体験)
とりあえず、いまから糖質制限ダイエットしようとか、ゆるめの糖質制限ダイエットをしている、という人は気にせず早くやりましょう。
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